「3D映像はどういう仕組みで立体的に見えるの?」
そのようなご質問にお答えします。
本記事の内容
・3Dの仕組みとは?
・3D映像の7つの表示方式
・3D映像を作る3つの方法
・3D映像を作る際の注意点2つ
3D映像は、画面から物体が飛び出しているかのように見える不思議な映像です。
ビジネスシーンにおいても活用の幅は広がっていますが、どのような仕組みで立体的に見えるのかをご存じでしょうか?
そこで本記事では、3Dの基本的な仕組みから3D映像の表示方式、3D映像の作り方や注意点をご紹介します。
3D映像の仕組みを知りたい方や、ビジネスシーンに取り入れたいと考えている方は、ぜひ最後まで読んでみてください。
創業15年の大阪の映像制作会社、株式会社インディゴの代表。映像業界で20年の経験を誇る。
2006年に単身でオーストラリアに渡り1年弱、現地の映像制作会社の業務に携わり、帰国後に独立しインディゴを創業。
映像に関する、企画、演出、撮影、CG制作など多くの見識があり実績として、クボタ、ダイキン、パナソニック、ハウスウェルネスフーズなど様々な関西大手企業の映像制作を手掛けている。
3Dの仕組みとは?
人が物体を見たときに平面の2Dではなく立体的な3Dに見えるのは、左右それぞれの目で別の映像を捉えているからです。
たとえば、顔の正面から10cm程度離した位置に物体を置いてみてください。
両目で見たときと左右それぞれの目を閉じて見たときとでは、見え方が微妙に違うはずです。
この見え方の違いは「視差」といい、左目と右目の間隔が空いていることで、それぞれ別の位置から物体を見ているため起こります。
視差のずれを脳が合成することで、立体的な映像として見えるのが3Dの仕組みです。
3D映像は目の仕組みを活用したもの
3Dに見えるのは目の仕組みによるものとご紹介しましたが、この仕組みを応用したのが3D映像です。
一般的な3D映像は、スクリーンなどに映し出された映像を専用メガネを用いて視聴することで立体的に見えるようになっています。
これは、映し出す映像を左目用と右目用に分け、スクリーンと専用メガネで「左目には左目用の映像」「右目には右目用の映像」と制御して見せているからです。
スクリーンとメガネの両方で人工的な視差を作り、脳にそれぞれの映像を合成させることで、立体感や奥行きを感じられる3D映像として認識しています。
3D映像の表示方式は、映画館などで用いられるスクリーン+メガネだけでなく裸眼で立体的に見えるものもあります。
次項で詳しくご紹介しますが、表示方式の違いで映像効果や費用面なども異なるため知っておいてください。
3D映像の7つの表示方式
3D映像の表示方式にはさまざまなタイプがあり、それぞれにメリット・デメリットが存在します。
ここでは、代表的な7つの表示方式について見てみましょう。
アナグリフ方式
アナグリフ方式は1915年頃から用いられていた初期の表示方式で、赤と青のレンズが付いたメガネをかけて視聴します。
映像自体も赤と青の2色で構成されており、「赤レンズで青の映像」「青レンズで赤の映像」を視聴するのが特徴です。
左目用・右目用のように分かれているわけではないものの、赤と青のレンズがそれぞれを打ち消すことで、左目・右目に別の映像が入るようになっています。
アナグリフ方式は、色によって視差を生み出しているのが特徴です。
【メリット】
3D映像を制作する際の費用が比較的安く、手軽に取り入れられます。
【デメリット】
映像自体を赤と青で構成するため、本来の色を表現できません。
また、長時間視聴すると目に負担がかかる可能性もあります。
フレームシーケンシャル方式
フレームシーケンシャル方式は、別名「シャッター方式」とも呼ばれている表示方式です。
左目用と右目用の映像を1秒間に120~240コマ交互に表示させ、同期したメガネをかけて3D映像を視聴します。
映像のタイミングに合わせてレンズのシャッターを開閉させることで、左目・右目の視差を表現しているのが特徴です。
【メリット】
表示方式の中で最も高画質な3D映像を表現できるため、映画やゲームなどさまざまなシーンで利用できます。
【デメリット】
リフレッシュレートの高いディスプレイやアクティブシャッター式メガネといった専用機器も必要なので、費用は大きくなります。
偏光方式
偏光方式は、光の波長を調整して左目用・右目用の映像を発生させる表示方式です。
垂直または水平方向に調整した光の波長は、偏光板メガネを通して分離させられるため、3D映像として視聴できるようになります。
3D映画を上映している映画館などで配布されるメガネは、この偏光式メガネが用いられています。
【メリット】
偏光式メガネは安価なので、取り入れやすいといった魅力があります。
また、メガネもコンパクトで軽く、視聴していても負担がかかりにくいです。
【デメリット】
先程ご紹介したフレームシーケンシャル方式と比べて画質は劣ってしまいます。
また、映像は暗く見えてしまうため、改良が課題です。
パララックスバリア方式
パララックスバリア方式は、垂直方向にスリットの入ったフィルターを用いる表示方式です。
スリットを通した映像は、「左目用の映像は左目」「右目用の映像は右目」と分かれて映るため立体的に見えます。
一部のデジタルカメラやビデオカメラの液状画面などにも採用されており、他の表示方法と違って裸眼でも3D映像を視聴できるのが特徴です。
【メリット】
専用メガネをかけなくても3D映像を楽しめるため、気軽に取り入れやすいです。
【デメリット】
正面から視聴しなければ、3D映像としての効果が薄れてしまいます。
また、スリットでバリアされた部分は光が遮られるため、暗く見えることもあります。
サイドバイサイド方式
サイドバイサイド方式は、左目用と右目用の映像を左右に分けて配置する表示方式です。
視差をそのまま利用して立体的に見せるため、専用のメガネなどは必要ありません。
テレビの3D放送などに用いられています。
【メリット】
左目用・右目用の映像さえ用意しておけばメガネを用意する必要がないため、取り入れやすい方法といえます。
【デメリット】
メガネを用いて映像を分けるわけではないため、視聴する位置がずれると立体的に見えない可能性もあります。
また、映像を見るユーザー自身の慣れも必要です。
トップアンドボトム方式
トップアンドボトム方式は、左目用と右目用の映像を上下に配置する表示方式です。
「上側が右目用」「下側が左目用」と横で分け、偏光フィルターメガネを使って左右別々の映像を見せます。
3Dパソコンなどでも採用されている方式です。
【メリット】
特殊な映像や高性能なメガネの必要がないため、費用を抑えて取り入れられるのが特徴です。
【デメリット】
映像を横半分で分けるため、垂直方向の画質は劣ってしまいます。
レンチキュラー方式
レンチキュラー方式は、レンチキュラーレンズと呼ばれるかまぼこ状のレンズを利用した表示方式です。
ディスプレイにレンズを貼り付けることで、映像が左目・右目に分かれて届くため立体的に見えます。
【メリット】
専用メガネを使用せずとも、3D映像が楽しめます。
【デメリット】
映像を視聴する角度によっては、立体的に見えない可能性があります。
3D映像を作る3つの方法
仕組みや表示形式が分かったところで、実際に3D映像を作るにはどうすればいいのでしょうか?
ここでは、3D映像を作る3つの方法をご紹介します。
カメラ2台を同期させる
3D映像を撮影するための専用機材もありますが、高額なので所有している方は少ないと思います。
しかし、一般的なビデオカメラを2台用意すれば3D映像は撮影可能です。
やり方としては、それぞれのカメラを6cm程度離して設置し、同時に撮影を行うだけです。
2台のカメラで左目用・右目用の映像を撮影し、間隔を少し開けることで視差を表現しています。
撮影後は、それぞれの映像を同期してタイミングを合わせ、映像編集ソフトなどで加工して完成です。
不要部分のカットやテロップ、BGM挿入などは一般的な編集作業と同じですが、焦点を調整し映像の見え方がおかしくなっていないか確認しなければいけません。
3D映像特有の編集作業ですが、焦点がずれていると映像が見づらいだけでなく、映像酔いの可能性もあるため注意しましょう。
編集作業はプレビューで確認しながら、丁寧に進める必要があります。
変換ソフトを利用して3D映像にする
カメラ2台を同期させる方法よりも手軽に行えるのが、2D映像を3Dに変換する方法です。
通常と同じように撮影した映像を、専用ソフトを用いて3D映像に変換します。
変換自体はソフトが行ってくれるため、初心者の方にも取り入れやすい方法です。
ソフトごとに機能や性能は異なるため、自分に合うものを選びましょう。
プロの制作会社に依頼する
3D映像は、一般的な映像よりも制作の難易度が高くなります。
そのため、ビジネスシーンで使用する場合はプロの制作会社に依頼して作るのも有効です。
制作会社に依頼すれば、カメラの位置や焦点の調整など、専門的な知識・技術の元でクオリティの高い3D映像を作成できます。
依頼先によって費用は異なりますが、短い3D映像の相場は10~50万円程度です。
ビジネスシーンで使用する3D映像を作りたい場合は、制作会社への相談も視野に入れてみてください。
3D映像を作る際の注意点2つ
3D映像を作る際は、2つの注意点を意識しておいてください。
撮影時はカメラワークに注意する
3D映像は、カメラがきちんと水平になっているか確認した上で、ゆっくりとしたカメラワークで撮影を行うのがポイントです。
カメラワークを意識していないと、画面がブレてしまったり水平を保てていなかったりと、映像の質が下がってしまいます。
ユーザーが気持ち悪い感覚に陥る可能性もあるため注意してください。
少しの揺れやズレでも、立体的な3D映像になると大きな違和感に繋がるため覚えておきましょう。
手持ちではなく、三脚などで固定した状態で撮影するのがおすすめです。
動きの激しい映像は控える
動きの激しい3D映像は、ユーザーが映像酔いを起こしやすくなるため注意しなければいけません。
先程もご紹介したように、撮影時はゆったりとしたカメラワークを心がけ、映像自体も動きが多くなりすぎないようにしましょう。
まとめ
本記事では、3Dの基本的な仕組みから3D映像の表示方式、3D映像の作り方や注意点をご紹介しました。
3D映像は目の仕組みを応用した映像で、専用メガネを使用したり特殊なレンズが付いたスクリーンなどに写すことで立体的に見えます。
ビジネスシーンにおいても活用の幅が広がると期待されているため、本記事を参考にぜひ取り入れてみてください。